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| ◆ 2.経営顧問の発達 |
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この種の仕事を職業的にまた或は職務的に行っておる人々は、従来から永年の間に、わが国に於いても、また諸外国に於いても、次第に発達して来ておったのである。これを広義に解すれば、その淵源も遠く、また、その種類も決して少くはなかった。蓋し、「経営」という事柄は、甚だ多面的なる側面を有するものであり、また、経営の創設、管理、合理化、更生、整理、改組、等の各段階に於いて、臨時に、また継続的に、専門家成は経験老の勧告、診断または指導を受ける必要を生ずる場合が少くないから、意味と場合とは様々であるが、経営顧問というものが生ずるに到っておったことは、直ちに諒解せらるることであろう。
例えば、創業に当って、慎重なる計画を樹て、まだこれを突行に移すにもって、学識経験者及ぴ専門技術家の参加を求むるの外、資本の蒐集に関して、金融及び―般経済界の事情に精通したる人々の助力を請い、また、手続その他に関して、法律家或は実務に精通したる人々の知識を借りるというが如きは普通のことである。この為に、それぞれの道の練達の士を依頓することは、日常行われておることであって、別に異とするに当らないことであるが、自然の中に、このそれぞれの事柄に関して、常時的に依頼を受けるような人々を発生せしめておった。別に、特別の職業家として看板を掲げないまでも、自然発生的に、この種の事柄はこの人というようなわけで、職業人的存在となっておる人も少くなかった。例えば、俗に所謂「財界世話業」というような類である。永年業界に於いて令名があり、顔役となっておるような人連に多かった。統制経済時代に於ける会議マン、組合マン、協会マンの中にも、この種の人々が多く発見できるのである。
勿諭、経営顧問を依頼するについては、既に、現業を引退した人々とか、第三者的立場におる人々を依頼するだけではなく、現に第―線に活動しておる「経営者群」または「専門家群」の中から特定の事柄に関して、特に顧問を依頼しておるような例も少くない。関係会社或は同系会社の場合は勿論であるが、取引上の関係或は縁故関係によって、特に経営上の顧問を依頼しておる例も少くない。例えば、新に工場とか百貨店とかを創始するに当って、問屋、異系の同業者、関係業務の有カ者等に経営顧問を依頼するというが如き例である。わが国の会社に於いて、役員会のメンバーに甚だ多くの異種の役員の網羅を見るのであるが、これもまた、常勤以外の人は、実は、この形に於いて経営顧問の職責を担当しつつある例が多いのである。
経営上の事柄は、前述するが如く、多面的であって、部分的に専門家の参加を必要とする場合が多いのである。その意味に於いて、弁護士の如きも、本来の法律的職務以外に経営顧問的役割を演じておったことは人の知る所である。同様の意味に於いて、既に職業的に確立しておるのであるが、公認会計士、計理士、弁理士、税理士、等の諸君が、本来の職務以外に、一般的に経営顧問の職責を果しつつあつたこともまた少くない。ドイツに於いては、特に、銀行家が、経営顧問の役目を依頼される慣習が多かったが、わが国に於いても、この種の例も乏しくない。また、医師の領域に於いて、開業医以外に、特に大学教授等の診断を受ける場合がある如く、経営上の指導を経営学の教授に請うという例は、諸外国、特にアメリカ及ぴドイツ等に於いては、普通のことであるが、我が国に於いても、必ずしも稀なことではない。
経営顧問として、最も著しい分野の一つは能率指導の方面である。ここに能率指導とは、生産過程の合理化に関する部面のみ云うのではない。事務管理、人事管理、財務管理、会計管理及び販売管理等を含んでいうのであるが、この部面に於いては、既に官庁、研究所、指導所、学校、諸会社、或は諸団体に属して、本職をもっておる人連の中に練達の士が少くないから、これらの人々を依頼することは甚だしばしば行われておる。しかし別に、特にこの部面に関しては、自由職業人として、専業でこれに従事するものを生じておった。アメり力でテイラリズムの創始者として知られておるフレデリック・ウィンズロー・テイラー(Frederick Winslow Taylor,1856〜1915)をもって、能率技師の最初の人だと主張するものもある。最初であるかどうかは意味の定め方にもよることであって、詳しくは別に研究を重ねる必要があるが、いづれにしても、ティラー及びその後継者達が能率技師として卓抜なる足跡を残したことについては、疑うの余地がない。能率指導は、工場内の生産過程の外、レイアウト(Layout)、運搬、輸送の如きより、事務、人事、賃金形態、仕入及ぴ販売、広告、店舗設営等の各方面に広く及んでいった。後には、原価管理、予算統制、内部統制等の分野の発達に貢献したことは、ここに詳述する必要はあるまい。
自由職業家として、この種の『経営業務』を行うことは、アメリカに於いて最も著しい発達を遂げておるように思われる。業務の専門化も頗る発達しておって、名称も様々のものが用いられておる。例えば、会計に関する職業として会計士(Professional Accountant)の外、特に原価計算及ぴ原価管理の専門家として原価会計士(CostAccountant)が存在する。販売に関しては、例えばマーケティング・カウンシラー(Marketing Councillor−販売顧問)等と称するものがある。能率指導に関しては、エフィシェンシィ・エンジ二ィアー(EfficiencyEngineer−能率技師)が発達しておるが、この称呼は、ある場合は職業名としてではなく、能カ名として用いられる場合もあるので、特に職業家としてはコンサルティング・エンジニィアー(Consulting Engineer 顧問技師)というような名称が用いられる。これらはまた特に事務管理とか、人事管理とか、賃金形態とかに関して専門化を生じておる。わが国では、経済学の教科書などに賃金形態に関して、例えばハルセイ(Halsey)式とかロ―ワン(Rowan)式とかいうような形態があげられておるが、これらは皆単なる学説ではなくて、皆それぞれ事務所をもって、賃金指導に当っておる人なのである。また―般的にビズネス・ドクター(Business Doctor−経営医師)というような名称も用いられておるのであって、この種の名称を拾ってみると、例えばインダストリアル・エンジニィアー(lndustrial Engineer−産業技師)マネージメント・エンジ二ィアー(Management Engineer 管理技師)等の外、20種以上もあるように思う。またこのそれぞれが、独自の職業団体を形成して、職業の維持と向上とを図っておるのである。最近に於いては、これらが、マネージメント・コンサルタント(Management Consultant−経営顧問)の名称に統―されるようになって来た。協会の数は34位あったように思われるが、この種の職業家は、11万人以上あるようである。勿論、筆者が会計士業の経営についても、かねがね論じておることであるが、依頼者(Client)の中には大会社も含まれておるのであって、イギリスの諺に「千人の行った仕事は、千人で監督しなければできることではない。」というのがあるが、大会社の仕事は、監査に限らず、経営診断或は経営指導の如ぎについても、個人事務所の力をもつて及び難い性質のものも少くない。それで経営顧問の業務にあっても、数十人乃至数百人の組合を作り、また或は、法人又は会社形態としてこの業務を行っておるものも少くないのである。
この状態は、アメりカに限ることではない。ドイツその他の欧州諸国に於いてもまた見られる所であって、例えばドイツ系に於いてはビュツヒィアー・レビゾー(Bucherrevisor 帳簿監査人)ビュッヒィアー・ザッハフェルステンディガー(Buchersachverstandiger−帳簿専門人)の時代を経て、一方にウイルトシャフツ・プリューファー(Wirtschaftsprufer ―経営検査人)を生ずると共に、他方にべトリィーブス・べラーター(Btriebsberater−管理顧問)及ぴウィルツシャフツ・べラーター(Wirtschaftsberater 経営顧問)を生づるに至った。ドイツに於いても、数十人乃至数百人の従業負を擁する監査及受託会社(Revissions-und Treuhandgesellschaft)を生じ、 監査の外、経営受託の業務を行っておったことは、アメリカに続くものである。医師の業界に於ける、医院及ぴ病院の発達と同様の経営形態である。 |

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