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日本経営士会とは

経営士の誕生

1.解題
2.経営顧問の発達
3.国の産業政策と経営顧問
4.経営士制度の創生に関する問題点
5.経営士会の職能
6.経営士発達の環境と基盤

4.経営士制度の創成に関する問題点
 わが国に於けるマネージメント・コンサルタントの制度を創設するに当っては、考うべき多くの点があるのであって、懇談会、準備委員会、及び創立総会の各段階に於いて、多くの論議が闘わされたことは当然である。その経過の一々を述べる必要もあるまいが、到達したる結論の主旨だけを略述しておくこととする。

 (1) 当列の問題は国との関係である。即ちこの制度を国の制度として設くべきか、それとも純然たる民間の自由職業として出発すべきかの問題である。勿論、永年の間に経営顧問の仕事は、前述する如く自然の中に、相当の社会的存在となっておる。また、特に能率技師及ぴ商店指導者等の面に於いては、既に自由職業家として相当の業績を上げておる人連もある。ある考え方からすれば、今しばらく自然のままの発達にまかせておいて、時期を待つということに一応の理由もないではないが、わが国の現状の場合に於いては、このままの形では多少の無理がある。殊に、現時最も要求せられておる最高経営顧問等に関して、自然のままでは発達に歪みを生づる場合も予期される。蓋し、わが国に於いては、由来、無形のサービスに対して報酬を支払うという考え方が甚だ遅れておる。なほその上に依頼者の依頼によって報酬を受けるというままの考え方では、公共の利益とか社会的職能とか、現時わが国で最も要求せられておる経営合理化の問題とかが度外視せられることとなり、経営顧問が経営顧問として、本来の職務のみによって独立不覇の存在をもつことは甚だ困難である。現在、少数の例外を除き、第一流の人達は、むしろ研究所とか、指導所とか、学校とかいうような、本俸を有するか、または特定の会社、工場或は商社等に常時的なる収人の源泉を有して、随時に必要に応じて、他の経営顧問を引受けるという人連の中に見出される。また他方、広く一般的なる多数の依頼を受けて、仕事をしておる人連もあるが、往々にして迎合的となり、また時として、品位を損づる虞れある場合を生じておる。わが国の現段階に於いては、従って、何らかの意味に於いて、国の援護を必要とし、また少くとも、法制的確立を必要とするのではないか、との議論が闘わされたわけである。しかし民主主義の建前から云っても、政府が、主導的に発動することは、避けなければならない。ということもあり、従って、安本及び通産省は、好意をもって援護するが、建前は、自治的に発達せしめることを本旨とし、暫らく公共的意味をもつ職業団体を結成し、この職業の発達と規正を図るべしということに落着いたのである。

 (2) 経営コンサルタントの仕事の中には、最高経営の問題もある代りに、経理問題があり、管理問題があり、また技術的側面の問題もある。この関係をいかにするかということが次の問題であった。

 (a) 先づ技術面の問題については、政府は、別に、コンサルティング・エリジ二ィアーの制度を同時に併せて促進することを意図しておったのであるが、マネージメント・コンサルタントに充立って、昭和 26年7月、日本技術士会が成立することとなり、建築士等と相並んで、技術についての業務を専門の職業とする「技術士」の成立を見た。そこでマネージメント・コンサルタントは、経営面の職務に明確に限定せられることとなり、この点は至極純粋となっだ。

 (b) 経理に関する問題は、別に公認会計士、計理士及び税理士があるのであって、いささか紛らわしき点もあるが、会計士の職務は、主として、財務書類の監査または証明を行うものである。財務書類の調整或は財務に関する調査及び立案をすることもでぎることになっており、財務に関する相談に応ずることもできることになっておるが(公認会計士法第2条)、主として、外部的報告及び公告の面にカ点がある。翻って、経営面に於いては、内部の統制及ぴ管理につき、計算面を度外視することができないのみならず、積極的に、原価管理及び予算統制は、経営面より、切離すことのできない職責であるから、この部面は、経営コンサルタソトの職務と認めることとなった。

 (c) 但し、経営コンサルタソトの職務の側面は、甚だ広範に渉るわけであるから、自ら経営コンサルタントの職務の中に、専門化を予想することが、却って便宜にも適い、将来の実質的発展を意図する所以であろうという意見に一致した。例えば、医師にあっても、―般的に医師としての素養を持つことは、当然に要求されるが、職務の執行に当っては、内科、外科、産婦人科、精神科、物療科、耳鼻咽喉科等の分化が行われておる如く、経営コンサルタントにあっても、専門とすべき分野を予定しなければ、徒らに職務が、広範となり、研究も行われず、従って、充分なる診断指導も不可能であろうということから、論議の結果、次の6分科を設けることとなった。

(1)経営部会、最高経営の顧問並びに、各分科の間に於ける連絡調整の職分を担当する。
(2)人事部会、人事管理及び賃金形態に関する職分を担当する。
(3)生産部会、生産過程、運搬、輸送、等の部面を担当する。
(4)販売部会、販売組織、販売管理及び商店管理に関する職分を担当する。
(5)経理部会、原価計算、原価管理及び予算統制に関する職分を担当する。
(6)事務部会、事務管理に関する職分を担当する。

 勿論、この分科は、便宜に従ったものであるから、人によっては、2分科以上を担当し得る能カ、素養成は経験を持つこともあり得るであろう。また、専門化が、一層進んだ場合に於いては、更にこれが細分され得ることもあるであろう。例えば、医師の場合に於いて、単純に内科とのみ云わずして、小児科が分離し、また結核専門とか、心臓を特に専門とする医師を生じておるが如きである。

 何れにしても、アメリカの場合に於いては、各種の専門家を生じたる後、マネージメント・コンサルタントとして共通の指標を持つようになつたのであるが、わが国の場合は、これらの先例を参考し得るが故に、当列から、共同にスタートし得て、然も他方に専門化を予定しておるのであるが、却って好都合であったと思う。

 (3) 経営コンサルタントを何と指称すべきかは、また一つの問題であった。しかし、別に技術士が成立したことより、問題は単純化せられたのである。唯、公認会計士、計理士、税理士、弁理士、弁護士、等と等しく経営士とすべしと云うに対して、経営管理士とすべしという意見もあったのであるが、一つには「管理」のみにこだわってはならないという論拠と、今一つには、3字で済む所を5字用いる必要はないという理由もあるから、結局、経営士に落着いたのである。