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6.経営士発達の環境と基盤

6.経営上発達の環境と基盤
 経営士制度の実質的確立が実現される為には、多くの前提が必要である。この種の制度は、―般的経済機構の発展と照応して初めて受入れられもし、発達もするものであるから、制度の確立と業者自身の自粛も、もとよりであるが、環境と基盤の問題について、なほ考うべき余地があるように思う。

 この環境と基盤との問題について、差出り考えなければならぬ問題は、1は、一般産業界即ち依頼者側の受入れ態勢の問題、2は、経営士養成の基盤としての大学教育の在り方の問題、特に経営士学としての経営学という問題がある。

 第1の産業界の受入れ態勢の問題であるが、これは多少とも醸成せられつつある。即ち、近頃の如く経済事情の変化が甚だしく、殊に経済法制の目まぐるしきまでの改廃が行われ、一方前述するが如く、経済界の底が浅いという状態のもとにおいては、いかに過去の経験に富んだ経営者並ぴに現場担当者と雖も、過去の知識と経験とがある為に却って現状が判らないということもあり、思案に余る事柄も多いわけである。やはり、それぞれの事柄につき専門的に研究を重ね、また諸経営の間を往来することによって、事例的知識を持つ専門家の助力を請う必要を生ずる事柄が無暗と多いのである。勿論その代りに、依頼を受ける経営士側に於いて、研究の余裕と情報を獲得する機会とが無ければならぬわけであって、その為には、大学とか、研究所とかの類も一層整備せられなければならない。また、その為にこそ、経営士会の研究活動が盛に行わるる必要があるであろう。勿論、これもいかに経営士が研究を行えぱいいと云っても、繁瑣なる激務のかたわら研究しなければならぬわけであるから、補導教育(Follow-up Education)の機会を捉えて、理解するだけが関の山である。故に「経営士の経営士」としての大学教授、その他の補導態勢が確立することが前提となる。これは自ら第2の大学教育及び研究所の発達等の問題につながる。

 次の問題は、今一つの依頼者側の受入れ態勢の問題であって、依頼者側の経営体制が、組織化し、或る程度まで高度化していることが前提となる。経営の合理化を阻害する原因は、外部的にもあり、また資金問題等もあるが、実は、内部にもあることが多い。即ち、従業者側の考え方乃至感情問題等である。本来、経営の合理化或は新しき機構、或は設備の採用等に関して、何事でも内部で賄い得るものではない。殊にあらゆる事に関する専門家を皆内部で揃えておく事ができるわけのものではない。担当の部課或は係員がでぎて、内部で研究調査すればよさそうなものであるけれども、これにも限度がある。殊に内部でのみ片附けるということは、そのこと自身がマンネりズムの原因となる。この故に、第3者たる外部の専門家を依頼することにまたそれとして意味があるのであるが、このことがなかなか素直に受取られない。この辺についても研究問題が存在するのである。

 最後に大学教育、研究所の在り方等に関する問題がある。会計学について、経営学としての会計学と共に、会計士学としての会計学が存在するという議論の樹て方を行う学者がある。言菜の当否は今ここで問題とするの余裕がないが、類似の意味に於いて、経営学の中に、経営士学としての経営学が発達すべき要請が存在することをもまた知らなければならぬと思う。学問とは何であるか。経営学とは何であるか。という議論をすることになれば、簡単には片附かないが、大学の経営学の研究並びに経営学教育が進んだ暁に於いて、新制大学院的研究並びに教育が要求せられる部面があることもまた注意しなければならぬ。従来の日本の大学並びに大学院は、この面に関しては、却って末発達の状態にあったのではないかと思われる、学問が究極に於いて実用に適い、実際を如美に解明する任務を持つことは、疑う余地のないことであるが、ともすれば、この解釈を専門学校的程度に解するの弊が従来存しておったと思う。大学院が学問の蘊奥を究める任務を持つと共に、高度の職業教育(Professional Education)をも行う任務を負担するのであるが、大学院に於ける経営学の研究及び教育も決して例外をなすものではない。否、医学、法学等と相並んで経営学は、正に大学院に於いて初めて真の研究がなし得るものであるということは、広く考えられておることであるが、つまり、この面を考えれば諒解せられることだと思う。「経営」というものが、経営士の職業として成り立った後に於いて、経営学はまた新たなる1つの指標を与えられることになつたのではないかと思う。この面は、経営士自体が誕生早々の乳児である如く、わが国に於いては、経営学に於ても未耕地であるようにも思う。この点は、経営士の職業自体の在り方と共に、更に詳しく考え、かつ、論づるの機会を持ちたいものと思っておる。